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『三つ編み』 図書館ではじまるシチリアの少女と移民青年の恋

決して出会うことのないそれぞれ3つの大陸に生きる3人の女性、3通りの人生。

彼女たちに共通するのは自分の意志を貫いて生きる勇気。

 

インドの不可触民(ダリット)のスミタは、娘を学校に通わせ悲惨な生活から抜け出せるよう尽力するが、その願いは断ち切られる。

 

イタリアのシチリアで、家族経営の伝統的な毛髪加工会社で働く二十歳のジュリアは、父の事故をきっかけに会社の経営不振の現実も知るところとなり、人生の岐路に立たされる。

 

カナダのモントリオールで弁護士として活躍するシングルマザーのサラは乳がんになり、これまですべて順調だったことが崩れ落ちる。

 

地理的にも社会的にも大きくかけ離れた境遇にあり、面識のない3人の女性の人生は、それぞれの勇気ある選択によって、結末でまさに三つ編みのように交差し結びついていく。

 

*****

 

図書館は、シチリアのジュリアの場面ででてくる。

 

ジュリアは、同じ年頃の若者が熱心に通うカフェやディスコの喧騒より市立図書館(ビブリオテカ・コミュナーレ)の静寂が好き。

 

シチリア古来の伝統で家族経営の毛髪加工工場で働きながら、毎日昼休みに図書館に通っている。

 

飽くことを知らない読書家で、壁が本で覆われた大きな閲覧室の、ページをめくる音だけが空気を乱す静けさが好きだ。どこか宗教的で、ほとんど神秘的な内省の雰囲気がしっくりくる。本を読むと時間がたつのも忘れる。子供のころ、作業場の女たちの足もとに座って、エミリオ・サルガーリをむさぼり読んだ。その後、詩に出会った。ウンガレッティよりカプローニが好きで、モラヴィアの散文詩を好み、とりわけパヴェーゼは愛読書だ。本さえあれば一生、誰もいらないかもしれないと思う。食べるのを忘れることもある。昼休みからすきっ腹で戻ることも珍しくない。そんなわけで、人がカンノーリ(リコッタチーズや砂糖漬け果物の入った、シチリアの筒状菓子)をむさぼるように、ジュリアは本をむさぼる。

 

ある日もまた、ジュリアが本を借りようと昼休みに図書館に行くと、ある男性と出会う。

何日か前の祭りの日、通りで憲兵隊に捕まっていたのを見かけ、強く惹かれていた男性である。

 

ジュリアは図書館内で彼のあとをつけ、声をかける。

お手伝いしましょうか?
このコーナーはよく知っているんです。
探している本があるの?

 

「イタリア語は普通に話せるけど、読み書きがおぼつかなくて上達したい」という彼に、イタリア文学の棚を案内し、現代文学はとっつきにくいかもしれないと考え、自身が子供のころによく読んだサルガーリの小説を薦める。

お気に入りの「空の息子たち。(イ・フィリ・デラリア)」。

 

男性の名前はカマルという。

カマルとジュリアは毎日のように昼休みに図書館で落ち合うのが習慣となる。

 

カマルとの出会いは、この後ジュリアの人生を大きく変えることになる。

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