図書館のはじまりにはさまざまな説がありますが、殷商時代の文字を刻んだ甲骨を収納する「亀室」がその起源だという話もそのひとつで、図書館の歴史を知るうえで、中国は欠かせない国のひとつです。
今日の記事では、中華圏(中国・香港・マカオ・台湾)の図書館を紹介します。
中国本土の図書館
中国国家図書館新館
中国国家図書館は、対外的に「中国国家図書館」あるいは”The National Library of China”と称していますが、中国国内では「北京図書館」と呼ばれる国立の図書館です。
中国本土の国家図書館は、北京市西部の白石橋の本館と北京市中心部の北海公園の西隣にある古籍館のふたつに分かれていましたが、2008年に12億円余りの巨額を投じ、本館の北側に隣接する形で新館が開館しました。
この図書館の誕生によって、北京市に3つの国家図書館が所在することになり、3つの図書館をあわせると延床面積約25万平方メートル、蔵書約2,700万冊、1日平均の来館者数が延べ1万人以上におよぶ世界でも屈指の巨大図書館となりました。
新館の開館を契機に、蔵書の配置やサービス内容についても大幅な改革が行われ、新館は中国語資料と電子資料を中心とした一般向けの図書館、旧館は外国語資料や学位論文など専門性の高い資料を提供する研究図書館として位置づけられ、古籍館は従来どおり、古書や貴重書などの古典籍資料を擁しています。
参照文献:呉建中 2009.『中国の図書館と図書館学:歴史と現在』京都大学図書館情報学研究会.
香港の図書館
中華人民共和国の南部にある特別行政区(一国二制度)であり、1997年に英国から返還された歴史を持つ香港の図書館は、中国内や欧米の図書館と比べると、あらゆる面で特徴を有しています。
香港中央図書館
2001年に香港島に開館した香港中央図書館は、香港公共図書館の本部であり、規模、施設の面で国際的な大都市の図書館に劣ることなく、香港地区の情報センタ一、学習センター、社会文化センターとしての役割を果たしています。
11階建て、建築面積33,800平方メートル、敷地面積9,400平方メートルでの建物に200万冊(件)の本(資料)を収蔵でき、国内の図書館の中で最も設備が整い、文献資料も豊富で管理やサービスでも最先端を誇っています。

(筆者撮影)
銅鑼灣駅と天后駅の間にあり、近くにはビクトリアパークがあります。

マカオの図書館
2005年にユネスコの世界文化遺産に登録された「マカオ歴史市街地区」。
およそ2キロメートル四方に約30の資産が点在しており、その中のひとつに図書館があります。
ロバート・ホー・トン図書館(Biblioteca Sir Robert Ho Tung)
2005年に登録されたユネスコ世界文化遺産「マカオ歴史市街地区」。
およそ2キロメートル四方の最北、聖オーガスティン広場にあるレモンイエローの建物がロバート・ホー・トン図書館です。
香港の実業家で大富豪、ロバート・ホー・トンが1918年に購入した別荘を、遺言により公立図書館に改装されました。
2005年に図書館の新棟ができてからは、マカオ最大の図書館として、マカオ市民に利用されています。
ロバート・ホー・トンが残した貴重な古書は、もちろん重要なコレクションのとして大切に保管されています。
台湾の図書館
台湾の図書館は、それぞれの図書館(分館)に特徴があり、近年、そのコンセプトに沿ったデザインや空間、蔵書面、図書館が運営が世界でも注目されています。
台北図書館新北投分館
台北公共図書館北投分館は、台湾の台北、温泉で有名な北投区にある公共図書館です。
北投公園の中に自然に調和しながらたたずんでいるこの図書館は、エコ図書館、グリーン図書館などの愛称で親しまれています。
高雄市立図書館(2014年12月追記)
2014年11月にリニューアルオープンした台湾高雄市立図書館も、図書館好きにとっては見逃せない場所となりました。
図書館の最寄り駅であるMRT三多商圈駅は、高雄市で最も百貨店の多い三多路にあり、高雄で一番高い高雄85ビルの最寄り駅でもあります。
そんな街に融合するような外観を合わせるように、台湾高雄市立図書館はデパートのような外観で誕生しました。
台北の誠品書店のような、日本で言うと「ツタヤ図書館」と呼ばれる武雄市図書館のような雰囲気です。
一階にレストラン、二階にもカフェやパン屋があり、一日過ごせるランドマークになっています。
新北市立図書館(2015年5月追加)
建築に特徴を有する図書館ですが、それよりもサービスを充実させることに気を配ったと言う通り、24時間365日開館など、サービス面でも注目の図書館です。
マルチメディア対応やユニバーサルデザイン、さらには放課後学習支援やスロー読書のための閲覧室設計など地上10階建ての大型施設をフルに活用しています。
人が集まる仕組み、市民を育てる仕組みが考え抜かれ、図書館自体が1つの街のようです。
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