日本三名園のひとつ、岡山後楽園に岡山城。
これら岡山県を代表する名所を中心に、各種の文化施設が集まっている地域を岡山カルチャーゾーンといいます。
豊かな緑に囲まれた旭川の美しい水辺に、岡山の歴史と文化、自然や芸術が共存しています。
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岡山カルチャーゾーンの文化施設のひとつに岡山県立図書館があります。
来館者数・個人貸出冊数の全国1位を更新中
岡山県立図書館は2004年にリニューアル開館し、その翌年の2005年から11年連続で来館者数、個人貸出冊数ともに全国1位を誇る図書館です。
2019年8月22日追記:平成30(2018)年度の来館者数・個人貸出冊数がともに全国の都道府県立図書館の中で第1位となり、平成17(2005)年度から14年連続で全国1位を達成しました。((公社)日本図書館協会「日本の図書館2019年調査票」『図書館雑誌』8月号より)
ちなみに2018年度は、岡山県立図書館の来館者は約105万人で、2位の山梨県立図書館が約91万人。
貸出冊数は約144万冊で、2位は大阪府立図書館の約90万冊です。
岡山県立図書館 人気の理由
岡山県立図書館の貸出冊数が多い理由は至極単純で、図書購入冊数が年間で約5万冊と全国の都道府県立図書館の中でずば抜けて多く、こちらも2014年まで4年連続で首位となっています。
また、全国で発売される新刊図書の約7割を購入しています。
このように、図書館の購入冊数と利用者の貸出冊数が比例していることがわかります。
それだけではなく、分野別司書の配置やCDやDVDを鑑賞できるAVコーナー、休憩スペースなどを充実させているほか、大きなニュースやスポーツイベント時には、タイムリーに関連する企画展示や地元選手の企画展を設けたりと。
さらに、電子図書館システム「デジタル岡山大百科」を開設し、県内の公共図書館や大学図書館が所蔵している資料を検索できるシステムも備えています。
何より素晴らしいと思うのは、利用者が郷土の資料や情報を掲載することが出来る点です。(県内の学校の校歌の音源など、地元民なら楽しめるコンテンツが豊富です。)
「図書館」でイメージする、建物や空間、コレクションが素晴らしいだけではなく、地域を大切にする姿勢が岡山県立図書館が愛されている理由だと思いますが、この図書館は、図書館が地元を大切にしているというよりは、図書館の誕生以前に、県民と図書館関係者が作ってきた歴史があり、それらを経て誕生した現在の岡山県立図書館は、岡山県民にとっては”ホーム”なのかもしれません。
岡山県立図書館 開館までの15年の軌跡
大正期を代表する優れた洋風建築として知られた「旧日本銀行岡山支店」。
この施設を県が買収することに決まったのが、1989年9月9日のこと。
当時、再利用策として候補に上がったのが県立図書館、古文書館でした。
ほかにも、迎賓館、ビアホール、お金博物館という案も出ましたが、その約2カ月後には、本館に11階建てのビルを付設する建築で、図書館・古文書館が入館するという方針で決定されます。
その構想は、「パリの凱旋門のように下層階が門構えのビルを建て、本館を包み込む形にするもの。」と、一見、魅力的であり夢のような構想でした。
また、両施設とも「県民の文化遺産を守り伝え、情報資源として社会の役に立てる」という共通目的があると考えられていました。
一方、日銀の建物を保存することが主目的で、図書館がいずれ移転せざるを得ないという将来も明確であり、敷地の狭さや駐車場のスペース確保の問題など様々な異論もあって、3年ほど計画は頓挫してしまいます。
その間も、県民からの反対意見は絶えなかったそうです。
また、図書館関係者からも、資料の収納スペースなど現実的な問題の指摘があり、県立図書館と文書館は一転、99年に閉校した丸之内中学校の校舎跡地に建設されることになります。
そして、当初図書館になる予定とされていた「旧日本銀行岡山支店」は、古典的なギリシャ建築様式を生かし、音楽や演劇を公演できる多目的ホール(愛称「ルネスホール」)に、金庫棟だった重厚な建物はギャラリーとして、音楽や芸術を楽しむ文化芸術施設として生まれ変わりました。
ギリシャ古典建築三様式のひとつ「コリント式」による4本の柱頭部には彫刻が施され、ギリシャ建築の美しさが特徴的なこの施設が、図書館として生まれ変わっていたなら、開館当初こそ話題を呼び、多くの利用者や観光客が集まったかもしれません。
それでも、図書館の価値を表層的な面だけで計ったら、そのしわ寄せは必ず後世が背負うことになります。
県民が、自分たちで図書館の意義や目的、役割を考え、地方紙に意見や思いを上げたことにより、図書館の価値を改めて考えるきっかけになりました。
それらの声は、今も岡山県立図書館で目にすることができます。
そしてそれは、岡山県民が自分たちで築いた歴史の一部として図書館とともにこれからも残り続けます。
それは、来館者数や貸出冊数が全国1位であり続けることよりも、もっと尊いことかもしれません。
岡山県立図書館までの行き方
おすすめは、岡山駅から東山方面の路面電車に乗って「城下」で下車し、徒歩で、岡山カルチャーゾーンを巡りながら徒歩で行くことです。
050_08 路面電車乗り場
岡山カルチャーゾーンは、散歩で巡れる範囲に、歴史、文化、芸術、音楽にわたる多彩な文化施設が集まっている区域で、市街中心地にありながら旭川が流れ、後楽園とその周辺には豊かな緑があり、史跡や文化財が多く見どころがたくさあります。
また、近・現代建築をリードした建築家たちの作品の宝庫でもあるので、建築マニアにはおすすめです。
個人的にお気に入りの3カ所を紹介します
- 世界的建築家・安藤忠雄さんによるおかやま信用金庫
- 建築作品を通して街並みに対する意識を高める芦原義信氏による岡山シンフォニーホール
- 倉敷のまちづくりに貢献した浦部鎮太郎氏による夢二郷土美術館
ほかには、コミュニティサイクル「ももちゃり」で移動する方法もあります。
岡山県立図書館
開館時間:9〜19時(土・日・祝は10〜18時)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
Wi-Fi:あり(岡山公衆無線LANスポット<モバイルスポット>)
パソコン貸出、インターネット利用のできる設置パソコンの有無:あり
カフェ、レストランなど飲食スペース:あり
ホームページ → http://www.libnet.pref.okayama.jp/
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